「前立腺肥大症にかかっているかも」という不安のある人は、クリニックや病院の泌尿器科に受診します。一体どんな診察、検査が行われるのか、泌尿器科というのは痛い検査をするということで何か皆さん警戒されている方も結構おられると思うので、その実情について説明します。
オシッコの排出曲線が上に行けば行くほど、高ければ高いほどオシッコの勢いがいい。これが低ければ勢いが悪い。それは前立腺肥大なんかの排尿の状態。正常の排尿の状態は勢いよく、排尿時間も短い。便器に向かってオシッコをジャーっとするだけで、尿流のデータが出てきます。
治療法は主に大きく分けて、
薬物療法と
手術療法があります。
薬物療法
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薬物療法の一番基本的な治療はα1。遮断薬による治療。 神経受容体(ツボ)の刺激をといてやる薬です。そういう薬が、例えば、ハルナールとかフリバス、アビショット、ユリーフといったものです。 まずこれが第一選択で最初に使われます。ただし、この薬は血圧がちょっと下がりやすいので、低血圧の人にはあまり使えません。 |
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一方で、抗男性ホルモン薬がありますが、これは液を出す肥大部分を萎縮させて前立腺をちょっと小さくさせます。 それでオシッコを少し出やすくするという薬です。ただし、これは性機能障害を起こす可能性が高いので、ちょっと使いづらい面もありますし、それにPSAの値を少し下げますので、癌の合併などの発見を遅らせる点を考慮しなければならない薬です。 |
それ以外の種類としては、
植物製剤、漢方薬など古典的な薬があります。
この種類は炎症などの周辺症状を改善するには有効だとされております。
手術手術療法には、
内視鏡手術、開腹手術、それから
温熱治療なんかがあります。
昭和50年代前半までは、このおなかを切る手術が一番多かったのですけども、50年代後半からこういうTURPという前立腺を尿道から電気的に削る手術が増えました。
それから、それ以外にも、他のもう少し簡略化された手術が出てきています。それについて説明します。
これはおなかを切らずに治すもので、尿道から機械を入れて前立腺を削っている図です。 ただし、これはあまり前立腺が大き過ぎると出血がかなり多いので、大きすぎる前立腺については開腹手術でやるようになってきております。 |
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だけど、機械的閉塞の解除のため、この辺の重量を減らすのはやはり電気的に削る方法(TURP)が基準となっています。

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低侵襲手術としてレーザー治療や高温度治療があり、やはりこれは出血を少なくすることで利点がありますが、操作性と腺腫の減量効果という点で劣ります。 電気で削る方法では肥大腺腫をほとんど削ることができますが、レーザーは尿道の周りをトンネル様に広げる効果程度で限界があります。 |
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手前勝手な話ですけども、例えばどんな症状の程度でどんな治療が一般に行われているのかということを大体説明しようと思います。
軽症の場合は大体α1のそのツボを解放してやる、刺激を散らしてやる薬が一番使われています。それから、中等症、中程度の場合は、それに加えていろんな薬を使う場合も、ホルモン剤とか膀胱の機能を強化する薬を使いますが、患者さんの希望もあって手術をしたほうがいい場合もあります。 |
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重症の場合は、手術が第一でしょうが、膀胱の機能が問題になりますので、膀胱の機能が十分回復するまで管を入れるケースもあります。それぞれの状況で治療を変えることができます。
それから、最近の治療の工夫について説明します。
前立腺肥大症でオシッコが出にくいはずなのに、トイレに行くまでに我慢できずに漏らしてしまう。
これは膀胱が非常に過活動をおこし、膀胱が敏感になってしまってるケースです。前立腺肥大の抵抗が続くために、逆に膀胱が筋力を増した結果、強い尿意で漏らしてしまうというケースがよくあります。
こういうものに対しては、α1という神経の受容体(ツボ)を遮断する薬と、もう1つ、膀胱をリラックスさせてオシッコを漏れなくするような薬と合わせて使うとうまい具合にいくということあります。
ただし、こういう処方は万が一、尿閉いうオシッコが全く出ないという状況をもたらす可能性がありますので、泌尿器科専門医が、正確な診断のもとに、薬を慎重に投与する必要があると思います。
それから夜間頻尿についてですが、この夜間頻尿は前立腺肥大の刺激によるものとは、はっきり言って限りません。
前立腺肥大がきつい場合は、確かに何度も行くのですけども、ある程度薬でコントロールされ、それで排尿状態がいい場合、夜間頻尿を前立腺のせいだと思い込まないほうがいいと思います。
それでは、どういう原因が考えられるかというと、睡眠が浅いとか、睡眠中に体が冷えてるとか、あるいは睡眠前にたくさん水分を取りすぎる・・・。
最近は寝る前にたくさん水分をとれと言われますよね。だけど、それは逆にオシッコの量も増やすということを頭に入れておいていただきたいと思います。
それから、睡眠時間が長い。人によってはもう半日寝ている方もおられます。例えば患者さんで来ますと、「私は7時頃からもう床に入って、明け方の7時頃まで寝ています。」と言う。その間の尿の回数が4回か5回です。だけどそれは、1回のオシッコの量が多いのであれば、これは生理現象だと説明します。膀胱はあくまでも十分たまったオシッコを出すわけで、それを制限するわけにはいかんということです。
それからもう1つは、内科なんかでカルシウム拮抗剤を夕方に飲んでおられると、オシッコの出が多くなるというふうに言われておりますし、昼寝が長いとやっぱり夜の睡眠が浅くなります。良質な睡眠が得られませんので、夜間も頻尿が多くなるということがあります。夜間頻尿は夜間多尿による場合によく出くわすことがあります。

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最後に日常生活の注意について説明します。
大事なのは、骨盤内、前立腺の充血、うっ血、こういったものを引き起こさないような生活をするということです。それと、膀胱の機能が低下させるような薬に注意しましょう。
薬を調べてみますと、結局オシッコの出を悪くするのは、この抗コリン作用と言って、特に頻尿薬で使われるような作用が、こういう他の薬にも多少あるわけです。
例えば、痛み止めのブスコパンという薬、パーキンソンの薬、風邪薬。ルルなんかでもそういうのがあるということです。それから、不整脈の薬、アレルギーの薬、うつ病、あるいはうつ状態に使う薬。胃薬にも特殊なものについては市販のサクロンにもあるということです。 |
これは結局膀胱の機能低下が起こるために、そうでなくてもオシッコが出にくいのに膀胱が麻痺してしまうから、余計に出にくくなる、ということであります。
これはオシッコが止まって(尿閉)私のクリニックに来られた患者さんですけども、下腹部がポコンとふくれます。それで、管を入れてオシッコを取ってあげますと尿瓶に半分ぐらいたまる、この場合は900cc。この人がこういうふうになったきっかけは、風邪薬を飲んだせいだとわかりました。抜いたあとには下腹部はペシャンコになっています。私の経験例でも前立腺は必ずしも大きさとは関係がないということであります。
これは最近の私のところのオシッコが全く出なくなって来られた人を(表1)に示してみたのですけども、年齢は68歳から88歳まで。急性で来る場合もあれば、気付かず慢性的にこうなっている場合もあります。
オシッコを抜いてみますと大体、少ない人では200ccから、多い人はここでは900cc。放置すると両側の腎臓が水腎症になり、尿毒症になります。それだけのオシッコの量が膀胱にたまって出ない。大変苦しい。こういうふうに尿閉の状態に近づきますと、夜中の回数が本当に多くなる。5,6回。
その場合は、こういう尿閉というオシッコが全く出ないような状態があり得ますので注意してください。下の表から前立腺の大きさをこうやって見てみますとさまざまで、正常に近いものから非常に大きなものまであります。だから、大きさはそれほど関係ないという感じです。PSAもさまざまです。それで、留置期間、ある程度留置すると、一応は管から解放はされます。原因については、薬とかアルコールとか前立腺の炎症とかがきっかけでおこる場合がありますが、分からない場合も多々あります。
| 年齢 |
|
導尿 |
触診 |
重量 |
PSA |
留置期間 (日) |
原因 |
| 77 |
急性 |
450 |
鶏卵大 |
37 |
1.7 |
21 |
不明 |
| 79 |
急性 |
800 |
超鶏卵大 |
83 |
13 |
14 |
不明 |
| 71 |
急性 |
900 |
鶏卵大 |
62 |
6.1 |
7 |
薬 |
| 81 |
急性 |
400 |
超くるみ大 |
19 |
0.9 |
1 |
不明 |
| 75 |
急性 |
800 |
鶏卵大 |
43 |
12.3 |
7 |
アルコール |
| 68 |
慢性 |
400 |
超鶏卵大 |
72 |
5.2 |
自己導尿 |
不明 |
| 76 |
慢性 |
400 |
鶏卵大 |
? |
3.6 |
自己導尿 |
不明 |
| 70 |
急性 |
200 |
超くるみ大 |
32 |
12.1 |
14 |
急性 前立腺炎 |
| 83 |
慢性 |
900 |
鶏卵大 |
59 |
15 |
45 |
不明 |
ということで、私の経験も一応加えてお話ししましたが、前立腺肥大症というのは非常に慢性的な、生活の質(QOL)が問題となるもので、先の長い病気であります。だから、排尿障害がある場合、まずはできれば専門医へ行って正確な診断をし、それで方針を立ててもらうということがやはり私は一番大切だろうと思います。