血尿、前立腺肥大症、前立腺がん、膀胱炎、失禁、性感染症

前立腺肥大症、失禁等の症状、手術、治療方法の説明。尿路結石も。

前立腺肥大症

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排尿障害

前立腺というのは、男性にしかない臓器でありまして、女性に子宮があるように、男性にはそのかわりに前立腺があるというふうに思っていただいたらいいです。

排尿障害には2つのタイプがあります。
排出障害
・オシッコの時間がかかる
・オシッコの勢いが弱い
・おなかに力を入れないと出ない
・出るまでに時間がかかる
・残尿感がある
蓄尿障害
・大体夜間頻尿
・夜何度もトイレに起きる
・オシッコが漏れそうになる切迫尿意
・間に合わずに漏らす切迫性尿失禁
泌尿器系臓器
泌尿器系臓器 泌尿器系というのは、オシッコが通る道でありまして、血管、大動脈から腎臓に入った血液が大静脈を通って心臓に戻っていくのですが、その間に血液から水分や老廃物がろ過されてオシッコが作られます。
そのオシッコは尿管を通って下腹部の膀胱にたまって、それを外に出すのがこの尿道という管です。今回はこの排尿障害ということですので、この膀胱、尿道、この部分の内容になります。
排尿と前立腺
排尿と前立腺 構造を詳しく見ますと、膀胱と尿道がありますが、その膀胱の出口の尿道をドーナツ状に取り巻く臓器、これが前立腺で、正常は栗ぐらいの実の大きさで大体20グラム前後。
排尿、おしっこに関係する場所は膀胱、前立腺、尿道括約筋があります。この3つの関連で排尿が成り立っています。
排尿と前立腺
排尿と蓄尿の膀胱機能は神経で調節されております。主に自律神経が作用するのですが、その作用する場所が神経受容体なのですが、膀胱と尿道にツボがあると考えてください。
要するに、膀胱をゆるめる受容体(ツボ)と、膀胱の出口および尿道を縮める受容体(ツボ)があります。
排尿と前立腺

それでこの神経が働いてオシッコがたまります。ある程度たまったら、脊髄のほうにこれが伝わり、オシッコがたまったよというのがわかって、それが脳に伝わります。脳で「もうちょっと辛抱しろ」というふうに命令して、いよいよ刺激が強くなったら、脳でオシッコを出しましょうと判断して、トイレに行きます。それで、トイレに行って、そろそろしてもいいだろうと司令を出ると、膀胱が収縮しだして出口もゆるんで最後の砦の括約筋をゆるめます。括約筋は自分でゆるめられますが、これでちゃんと決められた場所に排尿ができるというふうなしくみになっています。

肥大症の機械的閉塞
肥大症の機械的閉塞 そういう状況の中で排尿障害というのは、この前立腺が一番大きな影響を与え、歳をとると影響が出てきます。この前立腺というのは、50歳以上になりますと徐々に大きくなってきましてふくらんできます。
正常の場合、前立腺部尿道はふくらみのない壁になっていますが、それが60、70代と年齢を重ねるにつれて、ふくらんだ肥大症になる人がいます。その場合、尿道が圧迫されて、ちょうどゴムホースをそうしたような状態になって、狭くなります。これを機械的閉塞と呼びます。一応この前立腺の重量、大きさが増えるということで、まずはオシッコの出が悪くなります。
肥大症の機械的閉塞 ただ、前立腺につきましては、大きさだけではなくて、それ以外にも神経の受容体(ツボ)も増加して、前立腺が腫れると同時にもっと収縮が強くなってきます。これを機能的閉塞といいます。
それに加え長時間こういう環境が続くと、膀胱の機能がちょっとまいってしまいまして、膀胱が非常に敏感になったり、あるいは伸び切って弱くなったりして膀胱機能障害が加わります。そういう3つの要因のつながりで結果的におしっこが出にくいなど、排尿障害のさまざまな症状が出てきます。

前立腺肥大症の最近の傾向は、老齢化のため60歳、70歳代の対象者が年々増えています。肥大症の自然史については、前立腺は徐々に腫れ、50歳ぐらいから始まって60代後半から70歳代が大きくなって成熟する時期であります。
これは大体4人に1人ぐらいが医療を要するというふうに言われます。原因としては老化とホルモン環境の変化ですけども、詳細はまだはっきりは分かっていません。

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検査の流れ
「前立腺肥大症にかかっているかも」という不安のある人は、クリニックや病院の泌尿器科に受診します。一体どんな診察、検査が行われるのか、泌尿器科というのは痛い検査をするということで何か皆さん警戒されている方も結構おられると思うので、その実情について説明します。

問診まずは、質問表(国際前立腺症状スコア)があり、それに沿って質問が行われるのが多いです。
症状が7項目ほど、それがどの程度なのかをお聞きして、それを点数につけるわけです。その点数の合計点で、どの程度きつい排尿障害の症状をお持ちなのかということをまずお聞きして、それにしたがって治療を開始するということになります。
国際前立腺症状スコア
軽症が7点まで、中等症が8点から19点、重症になりますと20点以上ということになっております。また、生活の質(QOL)をどの程度妨げているか、の質問票もあります。
血液検査

最近は前立腺がんの早期発見が非常に大切ということで、血液検査でPSAを測定するようになってきました。これは前立腺細胞の中の酵素で、これが高いと癌が見つかりやすいということで、盛んに初診時にはこの検査を内科でもされていると思います。前立腺肥大症でもこれが少し上昇することはあります。

腹部超音波検査
大きさ、形、それから残尿の量、そういったもののデータがすべて出ます。恥ずかしくもない状態で痛くもない検査が可能です。この写真は私のクリニックで行っている検査です。
(仰臥位でベッドに寝ていただいて、私が超音波を下腹部に当てています。)
腹部超音波検査
腹部超音波検査
↑クリックすると拡大図が見れます。
黒い塊が前立腺で、横の断面と縦の断面で肥大症の診断ができます。
大きさがこれでたちどころに分かり、また、残尿がどの程度かというのが分かります。
前立腺は計算しますと、119グラム。正常は20グラム程度ということなので、かなり大きな前立腺だということが分かります。ただし、この方法では前立腺は一塊となった前立腺しか写りませんので、これがこの検査の限界です。
だけど、これだけでも非常に前立腺が大きいかとか、出にくさがどの程度かということが非常によく分かりますので、大変有用な検査だと思います。
直腸診
直腸診

必要時には、古典的な検査ですけども、お尻から指を入れて前立腺の形、固さ、痛みなどを診る直腸診があります。

これは特に癌の場合、硬さが特徴ですし、炎症を疑う場合は、これをやって前立腺の液を取り出して顕微鏡で調べるという操作をします。

尿流測定尿流測定

オシッコの排出曲線が上に行けば行くほど、高ければ高いほどオシッコの勢いがいい。これが低ければ勢いが悪い。それは前立腺肥大なんかの排尿の状態。正常の排尿の状態は勢いよく、排尿時間も短い。便器に向かってオシッコをジャーっとするだけで、尿流のデータが出てきます。

ただし、オシッコがあんまりたまってないのにこういう検査をすると、正常の人でも勢いが悪い場合がありますので、その点は注意をしなければならないと思います。
それから、残尿測定というのは、経過観察で非常に役に立ちます。残尿の程度で排尿状態の改善度を把握できます。ただし、以前は管を入れて行いましたが、最近は超音波の探触子をおなかにチョンと当てることによって大体の残尿を見極めます。

超音波検診(経直腸超音波検査)
超音波検診
↑クリックすると拡大図が見れます。

お尻から探触子を患者さん自身に入れてもらって診断します。腹部超音波検査では1つの塊にしか見えなかった前立腺が、やっぱり直腸を介すると膜1枚隔ててみえますので、わりときれいに見えます。

左図の大きな塊の部分が前立腺肥大の部分で、それ以外の周辺部分が、本来の前立腺で、この辺から癌が出来やすいです。その点は非常に有用な検査です。これは水平断面です。

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治療方法
治療法は主に大きく分けて、薬物療法手術療法があります。 薬物療法
薬物療法 薬物療法の一番基本的な治療はα1。遮断薬による治療。
神経受容体(ツボ)の刺激をといてやる薬です。そういう薬が、例えば、ハルナールとかフリバス、アビショット、ユリーフといったものです。
まずこれが第一選択で最初に使われます。ただし、この薬は血圧がちょっと下がりやすいので、低血圧の人にはあまり使えません。
薬物療法 一方で、抗男性ホルモン薬がありますが、これは液を出す肥大部分を萎縮させて前立腺をちょっと小さくさせます。
それでオシッコを少し出やすくするという薬です。ただし、これは性機能障害を起こす可能性が高いので、ちょっと使いづらい面もありますし、それにPSAの値を少し下げますので、癌の合併などの発見を遅らせる点を考慮しなければならない薬です。
それ以外の種類としては、植物製剤、漢方薬など古典的な薬があります。
この種類は炎症などの周辺症状を改善するには有効だとされております。 手術手術療法には、内視鏡手術、開腹手術、それから温熱治療なんかがあります。
昭和50年代前半までは、このおなかを切る手術が一番多かったのですけども、50年代後半からこういうTURPという前立腺を尿道から電気的に削る手術が増えました。
それから、それ以外にも、他のもう少し簡略化された手術が出てきています。それについて説明します。
これはおなかを切らずに治すもので、尿道から機械を入れて前立腺を削っている図です。
ただし、これはあまり前立腺が大き過ぎると出血がかなり多いので、大きすぎる前立腺については開腹手術でやるようになってきております。
手術
だけど、機械的閉塞の解除のため、この辺の重量を減らすのはやはり電気的に削る方法(TURP)が基準となっています。
レーザー治療
低侵襲手術としてレーザー治療や高温度治療があり、やはりこれは出血を少なくすることで利点がありますが、操作性と腺腫の減量効果という点で劣ります。
電気で削る方法では肥大腺腫をほとんど削ることができますが、レーザーは尿道の周りをトンネル様に広げる効果程度で限界があります。

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最後に

手前勝手な話ですけども、例えばどんな症状の程度でどんな治療が一般に行われているのかということを大体説明しようと思います。

 

軽症の場合は大体α1のそのツボを解放してやる、刺激を散らしてやる薬が一番使われています。それから、中等症、中程度の場合は、それに加えていろんな薬を使う場合も、ホルモン剤とか膀胱の機能を強化する薬を使いますが、患者さんの希望もあって手術をしたほうがいい場合もあります。

イメージ

重症の場合は、手術が第一でしょうが、膀胱の機能が問題になりますので、膀胱の機能が十分回復するまで管を入れるケースもあります。それぞれの状況で治療を変えることができます。

 

それから、最近の治療の工夫について説明します。


前立腺肥大症でオシッコが出にくいはずなのに、トイレに行くまでに我慢できずに漏らしてしまう。

これは膀胱が非常に過活動をおこし、膀胱が敏感になってしまってるケースです。前立腺肥大の抵抗が続くために、逆に膀胱が筋力を増した結果、強い尿意で漏らしてしまうというケースがよくあります。

こういうものに対しては、α1という神経の受容体(ツボ)を遮断する薬と、もう1つ、膀胱をリラックスさせてオシッコを漏れなくするような薬と合わせて使うとうまい具合にいくということあります。


ただし、こういう処方は万が一、尿閉いうオシッコが全く出ないという状況をもたらす可能性がありますので、泌尿器科専門医が、正確な診断のもとに、薬を慎重に投与する必要があると思います。

 

 

それから夜間頻尿についてですが、この夜間頻尿は前立腺肥大の刺激によるものとは、はっきり言って限りません。

前立腺肥大がきつい場合は、確かに何度も行くのですけども、ある程度薬でコントロールされ、それで排尿状態がいい場合、夜間頻尿を前立腺のせいだと思い込まないほうがいいと思います。


それでは、どういう原因が考えられるかというと、睡眠が浅いとか、睡眠中に体が冷えてるとか、あるいは睡眠前にたくさん水分を取りすぎる・・・。

最近は寝る前にたくさん水分をとれと言われますよね。だけど、それは逆にオシッコの量も増やすということを頭に入れておいていただきたいと思います。

 

それから、睡眠時間が長い。人によってはもう半日寝ている方もおられます。例えば患者さんで来ますと、「私は7時頃からもう床に入って、明け方の7時頃まで寝ています。」と言う。その間の尿の回数が4回か5回です。だけどそれは、1回のオシッコの量が多いのであれば、これは生理現象だと説明します。膀胱はあくまでも十分たまったオシッコを出すわけで、それを制限するわけにはいかんということです。

 

それからもう1つは、内科なんかでカルシウム拮抗剤を夕方に飲んでおられると、オシッコの出が多くなるというふうに言われておりますし、昼寝が長いとやっぱり夜の睡眠が浅くなります。良質な睡眠が得られませんので、夜間も頻尿が多くなるということがあります。夜間頻尿は夜間多尿による場合によく出くわすことがあります。

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最後に日常生活の注意について説明します。


大事なのは、骨盤内、前立腺の充血、うっ血、こういったものを引き起こさないような生活をするということです。それと、膀胱の機能が低下させるような薬に注意しましょう。

薬を調べてみますと、結局オシッコの出を悪くするのは、この抗コリン作用と言って、特に頻尿薬で使われるような作用が、こういう他の薬にも多少あるわけです。

例えば、痛み止めのブスコパンという薬、パーキンソンの薬、風邪薬。ルルなんかでもそういうのがあるということです。それから、不整脈の薬、アレルギーの薬、うつ病、あるいはうつ状態に使う薬。胃薬にも特殊なものについては市販のサクロンにもあるということです。

これは結局膀胱の機能低下が起こるために、そうでなくてもオシッコが出にくいのに膀胱が麻痺してしまうから、余計に出にくくなる、ということであります。


 

これはオシッコが止まって(尿閉)私のクリニックに来られた患者さんですけども、下腹部がポコンとふくれます。それで、管を入れてオシッコを取ってあげますと尿瓶に半分ぐらいたまる、この場合は900cc。この人がこういうふうになったきっかけは、風邪薬を飲んだせいだとわかりました。抜いたあとには下腹部はペシャンコになっています。私の経験例でも前立腺は必ずしも大きさとは関係がないということであります。


 

これは最近の私のところのオシッコが全く出なくなって来られた人を(表1)に示してみたのですけども、年齢は68歳から88歳まで。急性で来る場合もあれば、気付かず慢性的にこうなっている場合もあります。
オシッコを抜いてみますと大体、少ない人では200ccから、多い人はここでは900cc。放置すると両側の腎臓が水腎症になり、尿毒症になります。それだけのオシッコの量が膀胱にたまって出ない。大変苦しい。こういうふうに尿閉の状態に近づきますと、夜中の回数が本当に多くなる。5,6回。

 

その場合は、こういう尿閉というオシッコが全く出ないような状態があり得ますので注意してください。下の表から前立腺の大きさをこうやって見てみますとさまざまで、正常に近いものから非常に大きなものまであります。だから、大きさはそれほど関係ないという感じです。PSAもさまざまです。それで、留置期間、ある程度留置すると、一応は管から解放はされます。原因については、薬とかアルコールとか前立腺の炎症とかがきっかけでおこる場合がありますが、分からない場合も多々あります。

年齢   導尿 触診 重量 PSA 留置期間
(日)
原因
77 急性 450 鶏卵大 37 1.7 21 不明
79 急性 800 超鶏卵大 83 13 14 不明
71 急性 900 鶏卵大 62 6.1 7
81 急性 400 超くるみ大 19 0.9 1 不明
75 急性 800 鶏卵大 43 12.3 7 アルコール
68 慢性 400 超鶏卵大 72 5.2 自己導尿 不明
76 慢性 400 鶏卵大 3.6 自己導尿 不明
70 急性 200 超くるみ大 32 12.1 14 急性
前立腺炎
83 慢性 900 鶏卵大 59 15 45 不明
ということで、私の経験も一応加えてお話ししましたが、前立腺肥大症というのは非常に慢性的な、生活の質(QOL)が問題となるもので、先の長い病気であります。だから、排尿障害がある場合、まずはできれば専門医へ行って正確な診断をし、それで方針を立ててもらうということがやはり私は一番大切だろうと思います。

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